過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は炎症やがんなどの病変がないにも関わらず腹痛や便秘、下痢などを繰り返す病気です。数か月以上にわたり症状が持続し、ひどい時には日常生活にも支障が出ることがあります。病状により、下痢型、便秘型、便秘と下痢を繰り返す混合型に分類されます。下痢型は30~40代の男性に多く、ストレスや緊張などをきっかけに腹痛と激しい便意とともに下痢を生じることが特徴で、会議や通勤などトイレに行けない状況のときに発症しやすいとされています。便秘型は20代と50代の女性に多く、便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こります。混合型は便秘と下痢が交互に繰り返されることが特徴です。このような症状が3か月以上続く場合に過敏性腸症候群が疑われますが、いずれのタイプもストレスや疲れなどで症状が悪化し、就寝中や休日などは症状が現れにくいとされています。日本人の10%程度は過敏性腸症候群であるというデータもあり、決して珍しい病気ではありません。
過敏性腸症候群の原因
はっきりとした原因は分かっていません。腸の知覚過敏や腸内細菌叢の乱れ、ストレス、免疫異常が原因といわれています。真面目な方、完璧主義の方に発症しやすい傾向があります。消化管に分布する自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経には腸の動きを抑え、副交感神経は腸の動きを活発にするはたらきがあります。腸の動きはこの交感神経と副交感神経がバランスを取り合いながら調節していますが、ストレスや疲れなどによってバランスが乱れると腸の動きに異常が生じ、下痢や便秘を引き起こす原因になります。さらにこの状態が脳にストレスを生じさせる脳腸相関が病態の本質といわれています。また、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった後になりやすいことも知られています。
過敏性腸症候群の検査
血液検査では炎症や貧血の有無の他、甲状腺機能や糖尿病の検査を行い、症状の原因となる疾患の鑑別を行います。便中カルプロテクチンは潰瘍性大腸炎やクローン病の診断補助として使用可能で、過敏性腸症候群では数値が正常範囲内のため鑑別に役立ちます。大腸カメラでは炎症やがんなどがないことを確認します。これらの検査で異常が見つからない場合に過敏性腸症候群を疑います。
過敏性腸症候群の診断として下記のRome基準があります。
RomeⅣの診断基準
最近3ヶ月間、平均して月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上がある。
- 排便と症状が関連する(排便後に症状が改善する)
- 排便頻度の変化を伴う
- 便性状の変化を伴う
期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと。
過敏性腸症候群の治療
主な治療は生活習慣についての指導やアドバイス、薬物療法になります。まずは、十分な睡眠、規則正しい生活や食事(低FODMAP食)、運動を勧めます。これで改善しない場合には、セロトニン拮抗薬(イリボー®)、漢方薬などの薬物療法を行います。抑うつ気分などがあるときは、抗うつ薬や向精神薬などを用いることもあります。当院は過敏性腸症候群の治療の経験が豊富で、患者さまの症状に合った適切な治療法を提供します。他の医療機関で症状が改善しなかった方も是非ご相談ください。