慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍とは
慢性胃炎とは、胃粘膜の炎症が長期間持続することで胃の腺細胞が萎縮していく状態です。炎症がひどく修復が追い付かないと粘膜が傷ついていきます。傷が浅い状態をびらん、傷が深く粘膜下層まで達した状態を潰瘍といいます。年代としては60代以降に多く、原因となるピロリ菌の感染者数の減少と共に患者数も減少傾向にあります。しかし、毎年2000人以上が潰瘍による出血や穿孔で命を落としています。
慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因
ピロリ菌と痛み止めや解熱剤の非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)が2大原因です。ピロリ菌に感染しているとそれを排除しようと好中球やリンパ球といった白血球による炎症が持続します。さらにピロリ菌自体が毒素を出すことでも障害が生じます。障害を受け続けた胃粘膜は萎縮性胃炎という状態になり、胃の襞は消失し、粘膜の下を走る血管が透けて見えるようになります。萎縮した状態で再生した粘膜は正常な胃の上皮ではなく腸の粘膜に似た上皮が形成され、腸上皮化生と呼ばれます。腸上皮化生の粘膜からは胃がんが発生しやすくなるため、前がん病変として注意が必要です。NSAIDsは解熱・鎮痛・炎症を抑えることを目的として使われる薬剤です。リウマチや関節痛などの整形外科領域で使われる他、脳梗塞や心筋梗塞、またはその再発予防に使用されるアスピリンもNSAIDsの一種です。NSAIDSはプロスタグラジン(PG)という物質の産生を抑えることで、鎮痛・抗炎症作用を発揮しますが、PGは胃粘膜を保護する役割もあり、これも抑えられてしまうことで胃粘膜の防御力が低下し、びらんや潰瘍が生じるといわれています。NSAIDsは高齢者に投与されることが多く、注意が必要です。胃炎や潰瘍の原因としては、他にアルコールやストレス、稀ですがウイルス感染や自己免疫反応、クローン病によるものがあります。
慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の検査
まずは胃カメラを行います。胃炎があると特徴的な襞の肥厚や粘液の付着、萎縮、腸上皮化生といった所見があるので比較的容易に診断できます。逆に胃底腺ポリープやRAC(regular arrangement of collecting venules)といった集合細静脈が規則的に配列する像があれば、ピロリ菌がいないことが推測できます。びらんでは白色の浅い粘膜組織の欠損がみられ、潰瘍ではより深い陥凹した白色の粘膜欠損として観察されます。がんでも似たような粘膜欠損を示すので、生検検査で組織を採取してがんの鑑別を行います。生検ではピロリ菌の有無も確認できます。潰瘍から出血している場合は、その場で止血処置が行われます。
慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の治療
薬物療法
胃酸分泌を抑える薬や胃粘膜を守る薬などを使用します。ピロリ菌が陽性の場合は除菌治療を行います。NSAIDsはやめていただくことが理想ですが、無理な場合は適切な酸分泌抑制薬を併用します。
生活習慣の改善
消化の良い食事を腹八分目までにして胃の負担を減らしましょう。お酒やコーヒーは胃酸の分泌を促進し、タバコは胃粘膜の修復を遅らせますので避けてください。ストレスも悪化原因ですので、ストレスをためないように対策をとることも重要です。
消化に良い食品 | 消化に悪い食品 | |
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穀物 | 粥、白米、食パン、うどん | もち、玄米、菓子パン、そば、ラーメン |
野菜 | じゃがいも、里芋、豆腐、大根、人参、ホウレンソウ、カボチャ | サツマイモ、こんにゃく、きのこ、もやし、ごぼう、山菜、海藻 |
肉・魚 | 鳥ささみ、白身魚 | 豚、加工肉、イカ、タコ、貝類 |
果物 | バナナ、リンゴ、桃 | みかん、梨、柿、パイナップル |